今回は、松の根に生息する「菌根菌」に
ついて深掘りしていきます。
松の植え替えの際に樹を鉢から抜いたら
白いカビのようなものが生えていて
驚いた経験はありませんか?
うわカビ?根腐れかな・・ いえ、そうではないのです
松の生育に良い影響を与えるのか、
それとも悪い影響を与えるのか、
疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、菌根菌の正体から、
松との共生関係、そして盆栽の管理における
注意点まで、解説していきます。
菌根菌って一体何者?
菌根菌とは、植物の根に共生する菌類の一種です。
土壌中に存在し、植物の根に侵入して、
根と菌糸が絡み合った「菌根」と呼ばれる構造を形成します。
菌根菌は、植物から光合成産物をもらって
栄養を得る代わりに、
根のように土壌中へどんどん菌糸を伸ばし、
植物へ水分や養分を供給するという
役割を担っています。
松は海岸のように栄養分の少ない土地でも、
根の表面を覆うように菌糸を張り巡らせた
菌根菌のおかげで、うまく水分や栄養を得て
健康に育つことができます。
松と菌根菌の共生関係
松と菌根菌は、互いに利益をもたらす
共生関係を築いています。
松にとってのメリット
- 養分の吸収促進: 菌根菌は、土壌中からリンや窒素などの養分を効率良く吸収し、松に供給します。
- 水分の吸収促進: 菌根菌は、土壌中の水分を吸収しやすくし、松の乾燥を防ぎます。
- 病害虫への抵抗力向上: 菌根菌は、有害な菌の繁殖を抑えたり、病原菌への抵抗力を高めたりする効果も期待できます。(*)
*マツノザイセンチュウによる
松の苗木の枯れへの抑制効果が
報告されています。
菌根菌にとってのメリット
- 栄養分の供給: 松から光合成産物を受け取り、栄養源として利用します。
このように松と菌根菌は、
互いに助け合って生きているのです。
盆栽の松における菌根菌
菌根菌は、自然界の松だけでなく、
盆栽の松にとっても重要な存在です。
特に、鉢植えの松は限られた土壌環境で
生育するため、菌根菌との共生によって
養分や水分の吸収を助けてもらうことが大切です。
しかし、盆栽の管理方法によっては
菌根菌の生育が阻害される場合もあります。
菌根菌の生育を阻害する要因
- 過剰な施肥: 化学肥料の過剰な使用は、菌根菌の生育を抑制することがあります。
- 殺菌剤の使用: 土壌中の菌を殺してしまう殺菌剤は、菌根菌にも悪影響を与えます。
- 不適切な用土: 水はけや通気性の悪い用土は、菌根菌の生育に適していません。
菌根菌と上手につきあう
盆栽の松を健康に育てるためには、
菌根菌と上手につきあうことが大切です。
具体的な対策
- 有機肥料の使用: 化学肥料ではなく、有機肥料を使用することで、菌根菌の生育を促進できます。
- 適切な用土: きちんとふるって微塵を取り除いた赤玉土や桐生砂など、水はけと通気性の良い用土を使用しましょう。
- 殺菌剤の適切な使用: 消毒剤や殺菌剤を使用する場合は、適切な量を使用しましょう。
食用キノコと菌根菌
実は、私たちが普段食べているキノコの中には、
菌根菌として松と共生しているものが多く存在します。
菌根性キノコといいます。
例えば、秋の味覚の代表格であるマツタケも
菌根菌の一種です。
マツタケは赤松の根に共生し、
秋になると地上にきのこを作ります。
あの独特の香りは、まさに菌根菌と松の
共生の証と言えるでしょう。
他にも、ショウロ(海岸の松林に発生する
高級食材だそうです!)やアミタケなど、
食用として親しまれているキノコが
菌根菌として松と共生しています。
まとめ
菌根菌は、松の生育を助ける重要なパートナーです。
根に白いカビがあるのは健康の証、と考え
松を健康に育てていきましょう!